発車から停車まで(平坦な駅)

田嶋

「それでは、運転方法についての説明に入らさせて頂きます。

まず、発車の際は扉が閉まり"カチッ"という音が鳴るのを確認します。

その後、車掌からベル2回の発車合図を受けてからブレーキを緩めましょう。

平坦な駅なら大丈夫ですが、これが勾配のある駅で、ベル合図の前に

ブレーキを緩めてしまうと"転動"してしまう恐れがあります。

ベル合図が鳴る前に電車が動き出してしまう事も、立派な事故です。

 

さて、ベル合図を受けたら、まず1ノッチに入れましょう。

いきなり2ノッチ以上の力行を入れると発車時のショックが大きくなり

乗り心地としてよろしいものではありません。

およそ1秒程度1ノッチの状態を保った後に、2ノッチ以上で加速します。

 

駅停車時は、まず直通16°~24°程度の弱いブレーキで電制※を立ち上げます。

 

※電制...電気ブレーキのこと、近鉄電車は電気の回生を利用した電気制動と空気の

力で制輪子を車輪に押し付けてブレーキをかける空気制動(空制)があります。

 

いきなり強いブレーキを入れるとショックが大きくなってしまいます。

その後、徐々にブレーキを強めていき速度の調節をします。

大体の目安ですが、南大阪線の車両であれば

200メートル時・・・60km/h前後

100メートル時・・・40km/h前後

 50メートル時・・・25km/h前後

 20メートル時・・・20km/h以下

これくらいのペースで減速できれば、大体は綺麗に停車できると思います。

当然、乗車率や天候、車両特性によってこれは異なるものです。

僕の場合は、段階的にブレーキを強めて行き、段階的にブレーキを弱めていく

俗にいう"階段制動階段緩め"と言われてるやり方です。

停車直前に、再度ブレーキを強め直す(込め直し)と中速域で込め直しを

する時より、ショックが大きくなってしまうので気を付けましょう。

以上を踏まえて、まず1つ目の運転の仕方を見て頂きましょう。」

田嶋

「運転しているのは僕です。

これがいつもできる限り心掛けている"乗り心地重視"の運転です。

電車が許す限り、強いブレーキを使わず、またブレーキの操作も最低限に

なるように心掛けています。

停車直前に更にブレーキを緩めることで、完全停車時のショックを逃がしてます。

止まる寸前であれば、ブレーキが弱くても勢いが残っているので

そのまま止まれます。

 

続いては、乗り心地<時間 に注目した運転方法です。」

田嶋

「右下の時計を見ると、先程の運転に比べて10秒程早く到着しているのが

分かるかと思われます。

個人的には、速さを気にする上であれば、加速面(何キロまで加速するか等...)

よりも減速面の方が大きく関わっていると考えています。

この動画では、ノッチを戻すタイミングも先程とは異なりますが...

 

運転時分を詰めるのであれば、ブレーキはギリギリまで粘りましょう。

速度を落とすときはそこそこ速度を殺せる強さ(直通48~56°程度)で

一気に減速をはじめ、そのまま速度を落とします。

余裕で止まれそうであれば、一度ブレーキを少し緩めて距離を稼ぎます。

その後に再度ブレーキを詰めます。"止まる"というより"止める"という感覚です。

 

確かにこれで時間に余裕は出来ますが、左下のお客様にかかるショックを

示すメーターを見て頂けると非常に分かりますが、ブレーキのかけ始めと

停車時のショックがかなり違う事が分かるかと思います。

 

運転のスタイルはその人次第ですしどちらも間違っている運転方法では無いと思うので、

その人に合った運転方法を見つけるのが大事なんじゃないかな、と思います!」

急な勾配後にある駅(上り)

田嶋

「先程はほぼ平坦な北田辺駅での停車でしたが、これが勾配のある駅はどうなのか?

やってみましょう。停車する駅は高田市駅です。

この駅は駅の手前まで20‰の登り勾配になっており、南大阪線線区内では

非常にブレーキ操作が悩ましい駅ではないかな、と思います。

また、この区間はダイヤにも余裕が無く、ちょっとしたモタつきでも遅れになります。

では、まず僕の止め方から。」

田嶋

「それほど先程までとはやる事は対して変わらないです。

強いて言うなら、駅手前が登り勾配なのでそれを利用して、通常よりも少し

ブレーキを弱めにして駅に進入していきます。

勾配区間が終わったところで、再度ブレーキを込め直し、停止位置まで持っていきます。

これで大体ダイヤ通りの運転時分です。

 

では、続いて結崎さんの運転です。

本人がいますし、折角なのでご本人から解説して貰いましょう。」

結崎

「私は、見て貰って分かる通り、精一杯のところまでまずは加速します。

田嶋さんと比べて、ブレーキを始める地点が大分奥ですね。

これは、私はこの登り勾配も最大限に利用して減速するから、という理由です。

恐らく、これが平坦か、もしくは下り勾配の駅なら、まず止まれないでしょう。

勾配を厄介なものとして見るんじゃなく、味方につけて利用させて貰えれば

中々便利な物だと、私は思うんですよね。」

急な勾配後にある駅(下り)

田嶋

「先ほどの高田市駅は上り勾配の後にある駅でした。

今度は逆に下り勾配の後にある駅の停車になります、駅は浮孔駅です。

この駅の手前は約30‰の下り勾配になっており、制動効果が弱く感じます。

当然、平坦な駅と同様にブレーキ操作を行うと思うように速度は落ちません。

最悪、停止位置を超過して停止する事態になるかもしれません。

まず、ブレーキを掛け始めるのは通常より早めにかけ始めましょう。

自分はおよそ200kPa程度のブレーキを掛けて、そのまま暫く速度の落ち方を見ます。

その後、停止位置が近づいてきたら再度ブレーキを強めていきます。

この時「ちょっと速度落とし過ぎかな」くらいの気持ちでブレーキは

掛けていいと思います、止まれないよりはよっぽどマシです。

画面の表示上で勾配の数値が平坦になった後も、少しの間強めのブレーキを保ちましょう。

あくまでこの数値は先頭の運転台の勾配の数値であり、まだ後ろの車両は

下り坂の途中です、少し我慢して勾配を抜けきってからブレーキを緩めていきましょう。

それを踏まえた上での制動操作がこちらです。」